夏の七十二候 立夏から大暑まで

立夏から大暑まで、五月のはじめから八月のはじめまでの十八候です。田植えや麦の刈り入れ、梅雨、蛍、蓮の花と、暮らしと自然が深く結びついた候が続きます。

立夏りっか5月5日ごろ・Beginning of summer

暦の上で夏が始まる日です。新緑がまぶしく、一年のうちでもとくにさわやかな季節です。

第19候・5月5日〜5月9日ごろ

蛙始鳴かわずはじめてなく

田んぼや池で蛙が鳴きはじめるころです。水を張った田に蛙の声が響く風景は、初夏の訪れを感じさせます。蛙の声は、田植えの季節が来たことを知らせる合図でもありました。

英語では “Frogs start singing”

第20候・5月10日〜5月14日ごろ

蚯蚓出みみずいずる

土の中からみみずが顔を出すころです。みみずは落ち葉などを食べながら土を耕し、作物がよく育つ豊かな土を作ってくれます。地面が温まり、土の中の生き物も活発に動きはじめます。

英語では “Worms surface”

第21候・5月15日〜5月20日ごろ

竹笋生たけのこしょうず

竹林のあちこちで、たけのこが伸びるころです。たけのこは一日に数十センチ伸びることもあるほど成長が早く、すぐに竹になってしまうので、掘るのは芽が地面から少し顔を出したころが最適とされます。旬の味覚として食卓にも並びます。

英語では “Bamboo shoots sprout”

小満しょうまん5月21日ごろ・Lesser ripening

草木が育ち、あらゆる命が天地に満ちはじめるころです。秋にまいた麦の穂が実り、「ひとまず満足する」ことから名づけられたともいわれます。

第22候・5月21日〜5月25日ごろ

蚕起食桑かいこおきてくわをはむ

蚕が桑の葉を盛んに食べて育つころです。かつて養蚕は日本各地で営まれ、蚕の繭から取る生糸は大切な輸出品でした。蚕は暮らしを支える大事な存在として、「お蚕さま」と呼ばれることもありました。

英語では “Silkworms feast on mulberry”

第23候・5月26日〜5月30日ごろ

紅花栄べにばなさかう

紅花が一面に咲きほこるころです。紅花の花びらからは紅色の染料や口紅が作られ、昔はとても貴重なものでした。咲きはじめは黄色い花が、摘み取られるころには赤みを帯びていきます。

英語では “Safflowers bloom”

第24候・5月31日〜6月5日ごろ

麦秋至むぎのときいたる

麦の穂が実り、刈り入れを迎えるころです。「麦秋(ばくしゅう)」の「秋」は実りの時期を表す言葉で、季節は初夏でも、麦にとってはこのころが収穫の秋にあたります。黄金色に色づいた麦畑が風に揺れます。

英語では “Wheat ripens”

芒種ぼうしゅ6月6日ごろ・Grain in ear

「芒」は、稲や麦の穂先にある細いひげのことです。芒のある穀物の種をまく時期という意味で、ちょうど梅雨入りのころにあたります。

第25候・6月6日〜6月10日ごろ

蟷螂生かまきりしょうず

かまきりの子が卵から生まれるころです。秋に産みつけられた泡のような卵のかたまりから、小さなかまきりが一度にたくさん出てきます。田畑の虫を食べてくれるため、昔から身近な生き物として親しまれてきました。

英語では “Praying mantises hatch”

第26候・6月11日〜6月15日ごろ

腐草為螢くされたるくさほたるとなる

水辺の草むらで、蛍が光りはじめるころです。昔の人は、腐った草が蛍に姿を変えると考えていました。初夏の夜、小川のほとりで光がゆっくりと明滅する様子は、今も多くの人を引きつけます。

英語では “Fireflies glow”

第27候・6月16日〜6月20日ごろ

梅子黄うめのみきばむ

梅の実が黄色く色づくころです。このころの長雨が「梅雨」と呼ばれるのは、梅の実が熟す時期の雨だからという説があります。青い梅は梅酒に、よく熟した実は梅干しやジャムに使われます。

英語では “Plums turn yellow”

夏至げし6月21日ごろ・Summer solstice

一年でいちばん昼が長い日です。ただ日本では梅雨のさなかにあたるため、長い日差しを実感しにくい年も少なくありません。

第28候・6月21日〜6月25日ごろ

乃東枯なつかれくさかるる

冬至のころに芽を出した夏枯草(かごそう)が、枯れていくころです。夏枯草はウツボグサの別名で、夏に花穂が枯れて茶色くなることからこの名があります。冬の「乃東生」と対になる候です。

英語では “Self-heal withers”

第29候・6月26日〜7月1日ごろ

菖蒲華あやめはなさく

あやめの花が咲くころです。ここでの「菖蒲」は、端午の節句に湯に入れる菖蒲(しょうぶ)ではなく、花菖蒲やあやめを指すとされています。梅雨の雨にぬれた紫の花が、しっとりとした季節によく似合います。

英語では “Irises bloom”

第30候・7月2日〜7月6日ごろ

半夏生はんげしょうず

半夏(からすびしゃく)という草が生えはじめるころです。田植えはこの日までに終えるのがよいとされ、農作業の大切な目安になっていました。地域によっては、この日にたこや餅などを食べる習わしが残っています。

英語では “Crow-dipper sprouts”

小暑しょうしょ7月7日ごろ・Lesser heat

梅雨明けが近づき、暑さが本格的になりはじめるころです。この日から立秋の前日までが、暑中見舞いを出す時期とされています。

第31候・7月7日〜7月11日ごろ

温風至あつかぜいたる

熱をおびた風が吹きはじめるころです。梅雨明けが近づき、本格的な夏の暑さへと向かっていきます。梅雨明けのころに吹く明るい南風は「白南風(しらはえ)」とも呼ばれます。

英語では “Warm winds blow”

第32候・7月12日〜7月16日ごろ

蓮始開はすはじめてひらく

朝の池で、蓮の花が開きはじめるころです。蓮の花は早朝に開いて昼ごろには閉じ、それを数日くり返したあとに散ります。泥の中から清らかな花を咲かせる姿は、仏教でも大切にされてきました。

英語では “First lotus blossoms”

第33候・7月17日〜7月22日ごろ

鷹乃学習たかすなわちわざをならう

鷹の子が巣立ちに備え、飛び方や狩りを覚えるころです。春に生まれたひなが育ち、親鳥のもとで少しずつ空を飛ぶ練習をします。夏の空を舞う若い鷹の姿に、命の成長が感じられます。

英語では “Hawks learn to fly”

大暑たいしょ7月23日ごろ・Greater heat

一年でもっとも暑さが厳しいころです。夏の土用の丑の日も、多くの年でこの時期にめぐってきます。

第34候・7月23日〜7月27日ごろ

桐始結花きりはじめてはなをむすぶ

桐の花が実を結びはじめるころです。桐は初夏に薄紫の花を咲かせ、夏には硬い実をつけます。軽くて湿気に強い桐の木は、たんすや下駄の材料として重宝されてきました。

英語では “Paulownia sets seed”

第35候・7月28日〜8月1日ごろ

土潤溽暑つちうるおうてむしあつし

土がしめり、むし暑さが続くころです。「溽暑(じょくしょ)」は、湿気の多い暑さを表す言葉です。夏の土用の時期にあたり、うなぎなど精のつくものを食べて暑さを乗り切る習わしがあります。

英語では “Damp earth, humid heat”

第36候・8月2日〜8月6日ごろ

大雨時行たいうときどきふる

夕立などの激しい雨が、ときどき降るころです。強い日差しで温められた空気が上昇し、夏の午後には急な雷雨が起こりやすくなります。激しい雨のあとには、ひとときの涼しさが訪れます。

英語では “Great rains sometimes fall”