冬の七十二候 立冬から大寒まで

立冬から大寒まで、十一月のはじめから二月のはじめまでの十八候です。寒さが深まる一方で、雪の下で麦が芽を伸ばし、泉が動きはじめるなど、次の春へ向かう小さな兆しも描かれています。

立冬りっとう11月7日ごろ・Beginning of winter

暦の上で冬が始まる日です。日の光が弱まり、冷たい木枯らしが吹きはじめます。

第55候・11月7日〜11月11日ごろ

山茶始開つばきはじめてひらく

山茶花(さざんか)が咲きはじめるころです。「山茶」は本来つばきを表す漢名ですが、この候では同じ仲間の山茶花を指すとされています。花の少ない冬の始まりに、白や紅の花が庭を彩ります。

英語では “Camellias bloom”

第56候・11月12日〜11月16日ごろ

地始凍ちはじめてこおる

冷えこみで、大地が凍りはじめるころです。朝には霜柱が立ち、踏むとさくさくと音がします。冬の寒さが少しずつ本格的になっていきます。

英語では “The land starts to freeze”

第57候・11月17日〜11月21日ごろ

金盞香きんせんかさく

水仙の花が咲き、香るころです。「金盞」は金の杯のことで、水仙の花の中心にある黄色い部分を杯に見立てた呼び名です。寒さの中で凛と咲き、よい香りを漂わせます。

英語では “Daffodils bloom”

小雪しょうせつ11月22日ごろ・Lesser snow

わずかに雪が降りはじめるころです。まだ積もるほどではなく、ときおり小春日和のおだやかな日もはさまります。

第58候・11月22日〜11月26日ごろ

虹蔵不見にじかくれてみえず

日差しが弱まり、虹を見かけなくなるころです。空気が乾いて、虹ができにくくなります。春の「虹始見」と対になる候です。

英語では “Rainbows hide”

第59候・11月27日〜12月1日ごろ

朔風払葉きたかぜこのはをはらう

北風が木の葉を吹き払うころです。「朔」は北の方角を表す字です。冷たい木枯らしが落ち葉を舞い上げ、木々はすっかり冬の姿になります。

英語では “North wind strips the leaves”

第60候・12月2日〜12月6日ごろ

橘始黄たちばなはじめてきばむ

橘の実が黄色く色づくころです。橘は日本に古くからある柑橘で、一年中葉が青々としていることから、永遠を象徴する木とされてきました。京都御所の紫宸殿の前にも「右近の橘」が植えられています。

英語では “Citrus turns yellow”

大雪たいせつ12月7日ごろ・Greater snow

山では雪が本格的に降り積もるころです。生き物たちも冬ごもりに入り、平地でも冬らしい寒さになります。

第61候・12月7日〜12月11日ごろ

閉塞成冬そらさむくふゆとなる

空が重くふさがり、本格的な冬となるころです。天地の気がふさがり、生き物の活動もひっそりと静まります。どんよりとした冬空が続くようになります。

英語では “Cold skies, winter comes”

第62候・12月12日〜12月15日ごろ

熊蟄穴くまあなにこもる

熊が冬ごもりのため、穴に入るころです。熊は秋のうちにたくさん食べて栄養をたくわえ、春まで穴の中で過ごします。冬ごもりのあいだに、雌の熊が子を産むこともあります。

英語では “Bears enter their dens”

第63候・12月16日〜12月20日ごろ

鱖魚群さけのうおむらがる

鮭が群れをなして川をさかのぼるころです。海で育った鮭は、生まれた川に戻って卵を産みます。川を上る鮭の姿は、北国の冬の風物詩です。

英語では “Salmon gather”

冬至とうじ12月21日ごろ・Winter solstice

一年でいちばん昼が短い日です。この日を境に日が長くなっていくことから、昔は太陽がよみがえる日と考えられてきました。ゆず湯に入り、かぼちゃを食べる風習があります。

第64候・12月21日〜12月25日ごろ

乃東生なつかれくさしょうず

夏枯草(かごそう)が芽を出すころです。ほかの草木が枯れていく中で芽を出し、夏に枯れるという、ほかとは逆の暮らし方をする草です。夏の「乃東枯」と対になる候です。

英語では “Self-heal sprouts”

第65候・12月26日〜12月30日ごろ

麋角解さわしかのつのおつる

大鹿の角が抜け落ちるころです。鹿の角は毎年生え変わり、春になると新しい角が伸びはじめます。「麋」は大きな鹿を表す字です。

英語では “Deer shed their antlers”

第66候・12月31日〜1月4日ごろ

雪下出麦ゆきわたりてむぎのびる

雪の下で、麦が芽を伸ばすころです。秋にまいた麦は、雪の下でじっと寒さに耐えて春を待ちます。冬に行う「麦踏み」は、霜で浮いた根を押さえて丈夫に育てるための作業です。

英語では “Wheat sprouts under snow”

小寒しょうかん1月5日ごろ・Lesser cold

「寒の入り」とも呼ばれ、この日から節分までの約一か月が「寒の内」です。寒さが一段と厳しくなり、寒中見舞いはこの時期に出します。

第67候・1月5日〜1月9日ごろ

芹乃栄せりすなわちさかう

芹が水辺でよく育つころです。芹は春の七草のひとつで、一月七日には七草がゆにして食べる習わしがあります。冷たい水辺で、青々と茂る姿が見られます。

英語では “Water dropwort thrives”

第68候・1月10日〜1月14日ごろ

水泉動しみずあたたかをふくむ

地中で凍っていた泉が動きはじめるころです。寒さはいちばん厳しい時期ですが、地中では少しずつ春への動きが始まっています。目に見えない小さな変化をとらえた候です。

英語では “Springs thaw”

第69候・1月15日〜1月19日ごろ

雉始雊きじはじめてなく

雉が鳴きはじめるころです。雄の雉は「ケーン」と鋭い声で鳴き、雌に呼びかけます。雉は日本の国鳥で、昔話「桃太郎」にも登場します。

英語では “Pheasants call”

大寒だいかん1月20日ごろ・Greater cold

一年でもっとも寒さが厳しいころです。この冷たさを生かして、寒の水で仕込む味噌や酒づくり、武道の寒稽古などが行われてきました。

第70候・1月20日〜1月24日ごろ

款冬華ふきのはなさく

蕗の薹(ふきのとう)が顔を出すころです。雪の残る地面から、淡い緑のつぼみがのぞきます。ほろ苦い味は早春の味覚として、天ぷらやふき味噌にして楽しまれます。

英語では “Butterburs bud”

第71候・1月25日〜1月29日ごろ

水沢腹堅さわみずこおりつめる

沢の水が厚く凍りつくころです。一年でもっとも寒さが厳しい時期で、山の沢や滝が凍ることもあります。この寒さを利用して、凍み豆腐や寒天づくりが行われてきました。

英語では “Streams freeze solid”

第72候・1月30日〜2月3日ごろ

鶏始乳にわとりはじめてとやにつく

鶏が卵を産みはじめるころです。昔の鶏は、日が長くなる春先に卵を多く産みました。七十二候の最後の候で、これが過ぎるといよいよ立春を迎えます。

英語では “Hens begin to lay”