冬の七十二候 立冬から大寒まで
立冬から大寒まで、十一月のはじめから二月のはじめまでの十八候です。寒さが深まる一方で、雪の下で麦が芽を伸ばし、泉が動きはじめるなど、次の春へ向かう小さな兆しも描かれています。
立冬りっとう11月7日ごろ・Beginning of winter
暦の上で冬が始まる日です。日の光が弱まり、冷たい木枯らしが吹きはじめます。
山茶始開つばきはじめてひらく
山茶花(さざんか)が咲きはじめるころです。「山茶」は本来つばきを表す漢名ですが、この候では同じ仲間の山茶花を指すとされています。花の少ない冬の始まりに、白や紅の花が庭を彩ります。
英語では “Camellias bloom”
地始凍ちはじめてこおる
冷えこみで、大地が凍りはじめるころです。朝には霜柱が立ち、踏むとさくさくと音がします。冬の寒さが少しずつ本格的になっていきます。
英語では “The land starts to freeze”
金盞香きんせんかさく
水仙の花が咲き、香るころです。「金盞」は金の杯のことで、水仙の花の中心にある黄色い部分を杯に見立てた呼び名です。寒さの中で凛と咲き、よい香りを漂わせます。
英語では “Daffodils bloom”
小雪しょうせつ11月22日ごろ・Lesser snow
わずかに雪が降りはじめるころです。まだ積もるほどではなく、ときおり小春日和のおだやかな日もはさまります。
虹蔵不見にじかくれてみえず
日差しが弱まり、虹を見かけなくなるころです。空気が乾いて、虹ができにくくなります。春の「虹始見」と対になる候です。
英語では “Rainbows hide”
朔風払葉きたかぜこのはをはらう
北風が木の葉を吹き払うころです。「朔」は北の方角を表す字です。冷たい木枯らしが落ち葉を舞い上げ、木々はすっかり冬の姿になります。
英語では “North wind strips the leaves”
橘始黄たちばなはじめてきばむ
橘の実が黄色く色づくころです。橘は日本に古くからある柑橘で、一年中葉が青々としていることから、永遠を象徴する木とされてきました。京都御所の紫宸殿の前にも「右近の橘」が植えられています。
英語では “Citrus turns yellow”
大雪たいせつ12月7日ごろ・Greater snow
山では雪が本格的に降り積もるころです。生き物たちも冬ごもりに入り、平地でも冬らしい寒さになります。
閉塞成冬そらさむくふゆとなる
空が重くふさがり、本格的な冬となるころです。天地の気がふさがり、生き物の活動もひっそりと静まります。どんよりとした冬空が続くようになります。
英語では “Cold skies, winter comes”
熊蟄穴くまあなにこもる
熊が冬ごもりのため、穴に入るころです。熊は秋のうちにたくさん食べて栄養をたくわえ、春まで穴の中で過ごします。冬ごもりのあいだに、雌の熊が子を産むこともあります。
英語では “Bears enter their dens”
鱖魚群さけのうおむらがる
鮭が群れをなして川をさかのぼるころです。海で育った鮭は、生まれた川に戻って卵を産みます。川を上る鮭の姿は、北国の冬の風物詩です。
英語では “Salmon gather”
冬至とうじ12月21日ごろ・Winter solstice
一年でいちばん昼が短い日です。この日を境に日が長くなっていくことから、昔は太陽がよみがえる日と考えられてきました。ゆず湯に入り、かぼちゃを食べる風習があります。
乃東生なつかれくさしょうず
夏枯草(かごそう)が芽を出すころです。ほかの草木が枯れていく中で芽を出し、夏に枯れるという、ほかとは逆の暮らし方をする草です。夏の「乃東枯」と対になる候です。
英語では “Self-heal sprouts”
麋角解さわしかのつのおつる
大鹿の角が抜け落ちるころです。鹿の角は毎年生え変わり、春になると新しい角が伸びはじめます。「麋」は大きな鹿を表す字です。
英語では “Deer shed their antlers”
雪下出麦ゆきわたりてむぎのびる
雪の下で、麦が芽を伸ばすころです。秋にまいた麦は、雪の下でじっと寒さに耐えて春を待ちます。冬に行う「麦踏み」は、霜で浮いた根を押さえて丈夫に育てるための作業です。
英語では “Wheat sprouts under snow”
小寒しょうかん1月5日ごろ・Lesser cold
「寒の入り」とも呼ばれ、この日から節分までの約一か月が「寒の内」です。寒さが一段と厳しくなり、寒中見舞いはこの時期に出します。
芹乃栄せりすなわちさかう
芹が水辺でよく育つころです。芹は春の七草のひとつで、一月七日には七草がゆにして食べる習わしがあります。冷たい水辺で、青々と茂る姿が見られます。
英語では “Water dropwort thrives”
水泉動しみずあたたかをふくむ
地中で凍っていた泉が動きはじめるころです。寒さはいちばん厳しい時期ですが、地中では少しずつ春への動きが始まっています。目に見えない小さな変化をとらえた候です。
英語では “Springs thaw”
雉始雊きじはじめてなく
雉が鳴きはじめるころです。雄の雉は「ケーン」と鋭い声で鳴き、雌に呼びかけます。雉は日本の国鳥で、昔話「桃太郎」にも登場します。
英語では “Pheasants call”
大寒だいかん1月20日ごろ・Greater cold
一年でもっとも寒さが厳しいころです。この冷たさを生かして、寒の水で仕込む味噌や酒づくり、武道の寒稽古などが行われてきました。
款冬華ふきのはなさく
蕗の薹(ふきのとう)が顔を出すころです。雪の残る地面から、淡い緑のつぼみがのぞきます。ほろ苦い味は早春の味覚として、天ぷらやふき味噌にして楽しまれます。
英語では “Butterburs bud”
水沢腹堅さわみずこおりつめる
沢の水が厚く凍りつくころです。一年でもっとも寒さが厳しい時期で、山の沢や滝が凍ることもあります。この寒さを利用して、凍み豆腐や寒天づくりが行われてきました。
英語では “Streams freeze solid”
鶏始乳にわとりはじめてとやにつく
鶏が卵を産みはじめるころです。昔の鶏は、日が長くなる春先に卵を多く産みました。七十二候の最後の候で、これが過ぎるといよいよ立春を迎えます。
英語では “Hens begin to lay”